紀元前4世紀から現代のオーガニック思想について、流れをご紹介していきます。
紀元前4世紀
ギリシアの哲学者アリストテレスの有機体論では、自然界を目的を持つ有機的な全体と捉え、人間も自然の一部であるとする世界観でした。
中世から近世
スコラ哲学で再解釈され、17世紀以降の近代科学の登場で機械論的自然観が主流となり、有機体論は一時後退。
20世紀初頭の有機農業のはじまり
オーガニック農業(有機農業)という概念の発祥はヨーロッパで、その要因は、第一次世界大戦後、化学肥料や殺虫剤が急速に使われ始め、土壌や健康への影響が懸念され、荒廃した農村や経済混乱の中で自然回帰や有機農業の思想が生まれ始めます。
食糧危機など人々の生活が不安定な中、戦争技術の転用で、化学肥料や農薬が農業に導入されはじめ、食糧の生産性は上がる一方で、土壌劣化や健康被害への懸念が高まることになったのです。
特にドイツの哲学者/教育者であったルドルフ・シュタイナーの「バイオダイナミック農法(1924年)」や、近代有機農業の父と言われるイギリスのアルバート・ハワードの「近代有機農業(1930年代)」など、自然との共生を重視する農法が登場し源流となり、現代のオーガニックの思想や実践のベースを築きます。
<バイオダイナミック農法>
宇宙・自然・人間の調和を重視し、農場全体をひとつの生命体として扱う。ヨーロッパ最初の有機農法。
<近代有機農業>
1905年からインドでの農業研究を通じて、土の健康=人の健康という理念へ。
自然と共生する農業の必要性を説き、有機農業の土台を築く。
第二次世界大戦後(1945年~)、食糧不足を背景に「大量生産型農業」が世界で拡大されます。
化学肥料・農薬・機械化・単一作物栽培が推進。
これにより食糧問題は改善されるものの、環境破壊・土壌劣化・生物多様性の損失が問題へ。
オーガニック運動の誕生(1950年~1970年代)
1962年、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」が農薬被害を告発し、自然と共生する農法としてオーガニック(有機農業)の価値が注目され始める。
市民や農家が自主的に「自然な農業」を始めた時期で、アメリカではJ.I.ロッドデイルが「Organic Farming」の概念を広め、1970年代にヨーロッパではIFORM(国際有機農業運動連盟)が設立され、世界的なネットワークへ。
日本でも、戦後の食糧不足により化学農業を導入。農民と消費者の連携による「産直運動」や「提携」が全国に広がる。
(例:無農薬野菜の宅配、生活クラブ、大地を守る会、生協など)
現代オーガニック思想
農場を命ある有機体と捉え、自然との共生・調和・再生を重視する農法やライフスタイルが広がる。
CSA(地域支援型農業)・提携運動が継続され、近年は小規模農家による個別CSAモデル(LINEやSNSでつながる関係性)が増加。
プラネタリー・コンシャスネス
人も地球もひとつの生命体と捉え、全体性とつながりを意識した生き方を目指す思想へ。
オーガニックがなぜ生まれてきたのか、時代背景と共にご理解いただけたでしょうか。
戦争にて食糧不足に陥り、戦争にて生まれた技術が転用され、環境破壊・健康被害へと広がり、これはすべて人間がおこなってきたこと。
現代に生きている私たちは、過去に学びながら、改善に努め、地球とのつながりを意識した生き方へ。